プラネタリウム・アワー/嘉野千尋
 

   黒縁の眼鏡をかけた教授の講義が一段落すると
   スクリーン上に映し出されたままの
   夏の星座がゆっくりと回転し始める


   古びた校舎の窓側を覆う暗幕は
   その歳月にふさわしく
   至る所に虫食いの穴が散っていて
   その小さな穴を通して
   七月の日差しが細く差し込んでいる
   その様子がまるで
   スクリーンに映された夜空の続きみたいだと
   薄闇の中で微笑みながら君は言っていた


   ――あれは北の空
     南へ向かって飛んでいく白鳥には
     デネブとアルビレオ
     夏の夜空よ
     隣に見える
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