ゆげのむこう/服部 剛
 
終電前の 
人もまばらなラーメン屋  

少し狭いテーブルの向こうに 
きゅっ と閉じた唇が 
うれしそうな音をたて 
幾すじもの麺をすいこむにつれ 
僕のこころもすいこまれそう 

( 恋すればいつも 
( この瞳は
( 渦巻くなると  

ぼくときみの間に 
立ち昇る 
ラーメンのゆげ 

こんなにも近いのに 
眼鏡をかけたぼくは 
愛しいきみの顔が 
ぼやけて見えない 




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