体温/朽木 裕
。
子供のように熱を帯びた身体が
そのまま冷たくなりはしないかと。
こんな風に手をかたく繋いだまま
貴方が逝ってしまわぬかと。
想像だけで充分過ぎるほど狂える。
いらない思考をしている横顔に
不意におちてきたくちびる。
「なに考えてるの」
この人のすごいところは「それ」を知っているのに
敢えて問うところだ。
それでも私は答えない。
「別になにも」
まどろんだシーツの中、私はひとり狂う。
哀しみは液化して私の涙に成る。
かたわらの体温はまだあたたかい。
握っていた手に力が込められた気がした。
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