白い腕/アンテ
中深くから
なにかが浮き上がってくる音
ゆっくりと
だれも気づかない速度で
ずいぶん遅かったのね
笑い声
床板を突き破って
白い腕がふたつ生えてくる
わたしのお腹のあたりを抱きすくめて
ふたたび地中へ沈んでいく
わたしの身体が折れ曲がって
ずぶずぶ
ずぶ
視界が歪む
魚眼レンズのように
浮遊感
わたしと
わたしでないものの間の
境界が破れて
体液が流れ出して
ぽっぽう
なにかが突然泣いた
ぽっぽう
あたしを揺さぶる
身体が引っ張り上げられる
ぽっぽう
あれは
振り子時計だ
ぽっぽう
なんてこと
もうこんな時間
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