押入れの穴ぼこ/望月 ゆき
シャボン玉の行方を
穴ぼこからうかがっていると
ふわふわと飛んでいって
そのうちパチンッと
はじけました
それからもぼくは
暇さえあれば
シャボン玉を飛ばしに
押入れの上の段にのぼりました
ぼくがあまりにたくさん
シャボン玉を飛ばすので
暗闇では ひっきりなしに
パチンッ パチンッ と
玉がはじけています。
シャボンの水滴が
そこいらじゅうに
飛び散っており
そのとき
どこからか 声が
穴ぼこの向こうの暗闇の
ずっとずっと下の方に
目をやると
人々が こちらをあおぎ
草花が 満ち満ちています
ときどき人は
それを雨と呼んで
ときどき人は
穴ぼこを見上げたりします
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