陽炎/しでん
僕らの靴で踏み荒らされて
黒くなった雪のような ――の送別
歩き辛いほど 積もったものも もうなくて
――だって やっぱりいないんだ
この感情にピリオドを告げる
机の上の花瓶
――の名前と顔を 思い出そうとしても
それは雪解け水のように
僕の頭から流れるように逃げてゆこうとする
眠気とともに 忘れてしまいそうで怖い
教室の奥のほうではストーブが点いている
冬に似合わない陽炎が揺れている
(あの牢屋の中で、)
祈るように手を擦り合わせて
炎に浸る
窓を閉めてストーブにもたれかかる
何だか今は
マフラーに引火した時の焦げた匂いを嗅ぎたくって仕方ないんだ
おれなんか燃えてしまえば
(――は本当に消えてしまった)
燃えてしまえばいいのに
どうにかなっちゃいそうだと
笑い泣きしながら
戻る 編 削 Point(2)