おきてなくこの/錯春
 



 君はどうして台所で食事しているのか、幼心に不可解だったが、幼心に聞いてはならないと、私は、知って、いた。
 
 雪の降った日、病弱な私は靴を隠され外に出れなくされていた。
 家の者はみんないなくなって
 私は君の背中にへばりつき、雪道に出た。
 枯れ葉色の肌着からは焼きついた後の花火のにおいがして
 私を包んだ色褪せたはんてんは、縁日の小川の湿気で
 
 お腹をすかせた雪は、足跡も音も、すべて吸い尽くして、だから
 君の白髪には雪が更に積もって
 濁った両目は雪を映してさらに曇って

 私は、震えないことを知っていて、君の鼓膜に話しかけた
 何を話しかけたか
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