メランコリア <迷図1>/クリ
 
ーブだ。
トイレはどうせ、砂漠の上に粉々にばらまかれて跡形もないんだし。
美沙子の匂いがしたように思えて、少しだけ瞼を持ち上げてみる。

誰も、いない。

まるでうで枕をしていたかのように伸ばしていた左腕を、布団の中にしまい込む。
まるで誰かの頭が載っていたように痺れていた左腕は、氷のように冷たくなっている。
トトとノンが鳴き始めているが、俺には、心地よい子守歌だ。
瞼を持ち上げてみる。まだ持ち上げてなかったように思うから。
破壊された剥き出しの寝室から物憂い夜明けの光が見える。

眠れる…。迷路のゴールが見える。
津波の心配はない。



                                        Kuri, Kipple : 2004.05.07
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