初夏/吉田ぐんじょう
 
生まれ変わりで
帰りたい
帰りたい
と泣いているんだよ

と教えてくれたのは祖母だったろうか
それを聞いて以来
あまりに蛙が泣く夜は
切ないような泣きたいような気持ちになってしまう


初夏に生い茂る草は
なぜかみんな?の形をしている
ヴィクトリーの?だろうか
一体何に勝ったのだろう
それはわたしにはわからないが
夕暮れに一斉にゆれる?の群れは
確かにこの世で
もっとも強く美しいものに見える

?の群れが
ざざざ
とゆれる音は
まるで激しい夕立か
さびしいときの心臓の音のようだ


子供が幾人も駆けてきて
てんでに飛び上がりながら
夕空を千切って食べはじめた
ここらの子供の頬がいつも
滑稽なくらい赤くてぴかぴかしているのは
こうして毎日
夕空を食べている為であろう

飛び上がる子供たちは
夕日を背に
骨が透けて見えるような儚さで笑っている


初夏はさびしい
くちいっぱいに広がる風は
薄荷の味がして

初夏はさびしい



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