たまごを溶く/なまねこ
まっすぐにそそり立った夜から
はねあがるようにおきた明け方
まだ覚めきっていない体の白身を残して
黄身だけが流れだし
キッチンの冷蔵庫におさまってしまう
白身は悠長に時間をかけておきあがり
つまずきながら冷蔵庫へ向かう
外は晴れているが
明け方の声はくもったように聞こえる
黄身がいないと
そこここがにぶくなってしまう
冬の岩盤のようなとびらをあけると
ドアポケットにはたまごが四つ
よく手入れされたクローン羊みたいに並んでいる
にぎってみても
どれもきっちりと冷えていて
殻は漂白したように白い
黄身はどこだろう?
朝
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