幽命/望月 ゆき
 
そこに宿った
小さき 命

光を浴びることのなかった
小さき 命

その人の涙は
暗闇にひとすじ
混じりけのない
透明な線を描く

ぽつり、と落ちた水溜りには
空の雲が映って
その陰から
青い玉
のようなものが
こちらを眺めていた

どうやら ちょっと
タイミングを間違えちゃったみたい

今 また ここで順番待ちなんだ
待っててね

その玉は くったくのない顔を向け
微笑んで 手を振る

青く ゆらゆらと

芽生えて はじけた
幽かな命は
決して消えたのではない


必ず そこに 戻ってくるよ


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