扇風機にコエ/たもつ
長い列車に乗る
弟が先に座って待ってる
向かい合わせになり
二人でハムを食べる
好きだったケチャップ味が
どこまでも続く
入浴もあったが
傷が目立つので
やはり列車でよかった
せめてものあらましが
行程表になって久しい
本当はどこにも行かず
少し死んでいる気がする
むかし弟がしていたみたいに
口を大きく開ける
今になってその理由がわかる
溺れてはならなかったのだ
自分のために、ではなく
人のために
救いのようなものが
車内にアナウンスされてる
けれどそれは声になることなく
風に飛ばされそうな紙切れの中
文字だけにとどまってる
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