フルムーン/ななこ
 
小さい頃
夜空をくりぬいたかのように
真っ白な 満月に
追いつこうと 夜の街を走ったことがある

いつまで走っても
いくら転んでも
どんなに叫んでも

満月は遠くて
ちっとも近づけなくて

おばあちゃんが言いました

「お月さんはすごくすごく大きいんやけどね、すごくすごく遠いんよ」


その話をすると
あなたは笑って
私の頭を撫でただけでした


ねぇ あなたにたとえ話は難しかったかしら?

私は その頃から

あなたと私の距離を 知っていたのに
戻る   Point(9)