雷雨に浮かぶ幻想/渡 ひろこ
ながら
やっとの思いで窓を開け
新鮮な空気を肺に取り込む
5月末の外気は湿っていて
思ったより効果は得られなかった
見上げると どんより曇った空は
急速に暗くなり
時おり 雷がゴロゴロ低く唸っている
ポツポツと 雨
あっという間に激しい雷雨になった
なぜ こんな結果になってしまったんだろう
自分に降りかかる火の粉は
払い除けてきたはずだったのに
あまりの愚かさに自分自身に嫌気がさした
選択は一つしかないことは
わかっているのに
これから犯すであろう罪と恐怖に
身体が震えた・・・
ふと
運命や時間の悪戯で
そんなこともあるのではないか と
雷鳴の間に間に
幻想が浮遊する
激しい雨の日の
午後
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