絵のない絵本のような/朝原 凪人
 
「えーん、えーん」

なきむしのさっちゃんは
きょうもないています。

「えーんえーん、おかーさぁん」

なきむしのさっちゃんは
なきたくなると
いつもおかあさんのところにやってきます。

「あらあら、さっちゃんどうしたの?」

さっちゃんのおかあさんは
びょうきでもうずっとながいあいだ
びょういんにいるのです。

「おかーさぁん。あのねあのね」

さっちゃんはおかあさんに
ないているりゆうをはなします。

「うん。うん」

こんなときおかあさんは
やさしくさっちゃんのあたまをなでてくれます。
どんなときでも
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