恋のラヴ・ソング/はじめ
 
に停留所に着いてその後に彼女がやって来ても何も喋らず 時間だけが流れて 吹雪の中10分以上遅れてやって来たバスに乗ってさよならも言わず乗っていってしまうのがほとんどだった
 たまに彼女から声をかけてくれることはあったのだけれど 恥ずかしいのと嬉しいのと悲しいのとがあって 僕は素っ気ない返事ばかりをしていた そのうちに彼女も諦めたらしく 一緒にバスを待っていても何も話しかけてくれなくなってしまった
 僕はお互いのバスを待っている間の空気というか雰囲気が好きだった 携帯電話の時間も止まって時計屋の時計も止まって腕時計の時間も止まって永遠を感じることができた 僕は結局卒業するまでに彼女に告白することができなかった
 彼女は今年の6月に結婚する 僕も結婚式に呼ばれて歌を歌ってくれないかしらと頼まれた 僕は複雑な感情を整理できないまま 結婚式で『名もなき詩』を歌うつもりだ
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