残映/ロカニクス
ずっと
船に乗ってた
訳も分からず
切符を持っていたものだから
夜空が美しい
けれど夜が汚い
信じていた
その濃色を
波が輝いている
チェロの音色が聞こえてくる
離さない
そう叫んだときを思い出した
窓が割れた
鯱が入ってきた
よく見ると背中に
花が咲いていた
白い花だった
そういえば
月も白かった
切符を拾った日から
月が見えなくなった
そういえば
なかなかに何も知らなかった
月の白さしか知らなかった
それでもう鯱と泳いだ
血も涙も切符もなくても
月がまだあると感じたから
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