不細工なカーネーション/快晴
 
祖父は戦争で韓国から強制徴用され
月も眠る夜に専制君主の目を盗み
田舎の山奥の炭鉱を逃げ出した
今は亡き祖父の苦労は想像することも出来ないが
ある頃に祖国の弟にトラクターを贈ったらしい

貧しかった家の母は高校を卒業してすぐ
毎日ラーメン屋で汗水流して働いた
器量はとても良かったらしいが
生活するためには遊ぶ暇すら無かった

いつの日か何度目かの恋に落ち
仕事を辞めてこの土地に引っ越してきた
ある冬の晴れた日に生まれた私は
何ともめでたい名前を与えられた

小さな頃の記憶はもうあまり無い
幼稚園の送迎バス乗り場で毎朝泣いた
折り紙で作った不細工なカーネーションは
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