赤ノアイ/朝原 凪人
 
真っ赤な靴を履き
真っ赤なドレスを纏い
真っ赤な髪留めをつけた
真っ赤な美しい女の
そのくちびるはなぜだかいつも
半分だけ真っ黒でした

女は
いつもの酒屋の
いつもの席で
いつものウィスキィを
いつものように
いつものグラスに注がれた
その半分だけを飲みました

その女に恋をした
ウェイターの少年は
マスターに訊ねます
どうしてあのひとは真っ赤なのでしょう
マスターは答えます
それがあの女の目印だからさ

次の日も女は
いつものように酒屋に来ました
ウェイターの少年は
マスターに訊ねます
どうしてあ
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