庭/石瀬琳々
 
青い
夜明けのような苧環(おだまき)の花を行き交い
小さな蜂が羽を震わせている
光は飴色に輪を広げ
触れるたびに緑の葉は揺れ動く
あいさつのように かすかにそっと


      小ぎれいな窓に人影が見える
      カーテンを開け放ち
      じっと窓の外を見ている


緑の
両手を差し出し秋楡(あきにれ)は風を呼ぶ
真新しい若い葉は木陰を作り
その枝にぶらさがる古びたぶらんこ
誰かを待っているのかのようにかしいでいる
夢を見ているのか それとも風に


      その瞳は一点を見つめている
      唇を小さく結び
     
[次のページ]
戻る   Point(17)