レイン/チグトセ
 
なり
やがて春、悲しみを内包した頃
ようやくどこかの街を潤したよ
単に雨は
針のような黒い夜に抗わない街の寂しさを余計に増長させただけで
少しの川と時間を溢れさせて
そのあいだで君が今でもサイレントのうたを歌い続けていて
高いEの音が綺麗だ
きっとどうでもいい言葉だった
君の最後の言葉
僕は笑顔で応えて辞した
しっとりと
モノクロームのマスクが
水滴の流れゆく視界を丁寧に覆うのだ

レイン
君の口ずさんだうたはいつも
よくわからない外国のばかりで

表面を伝い下りた雫が指先に溜まる
靴底は水圧で吸着して
いつまで経っても
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