ノート(夜野原)/木立 悟
 

あちこちに月がひそむ夜
銀を一粒ずつ踏みしめて
雲をあおぎ歩みゆくひと


月の手は風
月の火は雨
ただなごむ
死のように



いのるひと いるりひと
いるりひと いのるひと


神ののぞみは
野の溝にのみ
人ののぞみは
人のみぞ知る


ぽかりと暗い言葉狩り
ぽかりと暗い事ばかり



野を歩み去るひとの音
届かない痛みに照らされて
夜の手首は筒のように
月へのばされ 震えている


[グループ]
戻る   Point(4)