アナザーストーリー/山中 烏流
 

 
そして君が
缶コーヒーを二本
その、小さな手に握りしめて
曲がり角を
ゆっくりと曲がる時
 
私は
ほぼ、確実に
曲がり角の反対側で
誰かがぶつかるのを
じっと待っている
 
 
人形は壊されて
少女は、電車を乗り間違えた
そして
野良猫はもう、
戻ってこない
 
こないのだ、けれど
 
 
それでも私は
今、此処で
薄くモカを香らせながら
 
ただじっと
ぶつかるのを、待って
いる。
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