準盲目の青年/はじめ
 
 彼は準盲目のピアニストである
 普段は鍼灸按摩を専業としている
 ピアノだけではまだ飯を食っていけないからである
 彼は指先の感覚が鋭く マッサージ屋で人気の一人である
 夜遅くまで働いた後は杖をついてアパートに帰り共同で使っているサイレント機能の付いているグランドピアノで朝まで猛練習をする
 リストやショパン チャイコフスキーやシューマンなどをだ
 彼は準盲目でありながら国際ピアノコンクールを目指している若者だ
 点字の楽譜は汗で黒ずんでいて無数の譜めくりの為にボロボロに痛んでいる
 彼の頭の中には1000曲以上完璧に記憶されている
 アパートの大家さんは夜食とお茶をお盆に持
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