限界/アンテ
しゃぼん玉が生まれた時
たくさんの仲間がまわりにあふれていた
陽の光はまぶしく
見るものすべてが新鮮だった
子供たちの手が伸びてきて
仲間のいくつかがぱちんと弾けた
悲しかったけれど
どうすることもできなかった
風にあおられて
しゃぼん玉はふわりと舞い上がった
視界が広がって
遠くまでつづくたくさんの屋根が見えた
仲間のいくつかは風に流されて
別の方向へ行ってしまった
必死に叫んでみたけれど
声は届かなかった
ぐんぐん昇って
マンションやビルをぜんぶ追い越して
街全体が見渡せるようになった
木や建物にぶつかって
仲間はひとつまたひとつ減っていった
[次のページ]
戻る 編 削 Point(14)