土曜日の王国/村木正成
 
丘の上で一匹の
蝶を追いかけていたら
普段はだれも寄りつかぬ
樹海の入口に立っていました
樹海の奥から声がして
その声に誘われるように
ついていくと
大きな沼が目のまえに拡がりました
するとまた声がして
記憶を沼に捨てろと言いました
その声に誘われるように
沼に記憶を捨てると
花畑が目のまえに拡がりました
そこで一匹の蜂が
わたしを刺すと
わたしは一匹の蜂になり
わたしを刺した蜂に
導かれて
土曜日の王国に行きました
そこでわたしは
街の小さなレストランで
ドングリのスープで
食事をしました
しばらく散歩をしていると
王家のパレードが
広場を通りました
空には無数の風船が
舞っていました
するとその風船を
目印にして
大きな黒いモノが
次々に街を破壊しました
わたしは大急ぎで逃げました



わたしが目を覚ますと
沼の前に立っていて
カラスの団体が
南の空に帰って行くところでした
土曜日の王国の崩壊でした

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