3月の不動産屋に紹介された部屋の日溜まりと外の風景/はじめ
 
浸されていた 冷たい空気が窓の隙間から入ってきて部屋中に充満していた 寒気がした 暗闇の中を立ち上がると 外の景色を見た 一つ一つの家に明かりが灯っていて 窓を開けると街の喧騒や騒音や蠢きが聞こえてきた 冷たい風が吹いてきて僕は烏が鳴いているように聞こえた 僕は暫く景色を見ていた 灯台が空を切って海を照らし 船が微かに聞こえる汽笛を鳴らして港に入ってきた ここの物件は本当に景色がいい
 僕は窓を閉め 壁にもたれながらあのもう触れることのできない日溜まりを名残惜しく思い出し床を撫でた もう床は冷え切っていてとても横になって眠れる状態ではなかった それでも僕は仰向けになり両腕を頭に組んであの常口アトムの綺麗なお姉さんと日溜まりと外の風景を思い出した 僕は安心した気持ちになり 汽笛の音をずっと聴いていた
戻る   Point(7)