「焼き鳥『しげ』」/ゆいしずと
 
たちは
ここを故郷と呼んでくれるだろうか。

奥の座敷には子猫たちが遊び、
勢いあまって、足元まで走ってくる。
人の顔を見ては後ろっ飛びに逃げ
すぐにまた追いかけっこだ。
いつも一本多めに焼かれる焼鳥は
猫たちへの、おすそわけの分。

古き良き時などと思うのは
つまらない感傷か。
都会は代謝を必要としているのだという
だれの理想だか知りもしないが。

郷愁に浸るほどの長い歴史を
そこで過ごした訳でもないが
猫らの行方が気がかりで仕方ない。
そんな猫たちの日常を踏みにじってまで
人は何をしようというのだろう。
そうしてまで、街はきれいであるべきなのか。

黄色き安全帽の動かす
重機の音が轟々と・・・
都会は代謝を必要としているのだという
だれの理想だか知りたくもないが。

都市の情念は小利口な思想へと洗脳されていく


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