静かな氾濫をこえて?四つの断章 デッサン/前田ふむふむ
ることが、
臆病者と陰口をたたかれる時代があった。
熱狂は、テレビゲームのように、
多様な遊び方の説明書が付いていた。
「メーカーにより、操作方法が異なります。」
象が墓場を目指すように、
あるいは、気取ったポーズをして、
わたしは、孤独な書架にもぐり、
うすい色の心臓の鼓動を聞いていたが、
深い海を泳いでいる魚のように、
顔は、黒い円を掬ぼうとしていたと思う。
そこで、手に付いた取れない血を、洗っている君も、
そうだっただろう。
あの夕立の頃は、
血を探すのに、懸命だった。
わたしも、君も、街角にこまめに足跡を付けている
犬も、猫も、からすも。
4
月が、聡明なひかりを向けているときは、
到着駅の、ひとつ手前の駅で、
死者の笑い声を聞いて、
ともに笑いながら、オフ会をしよう。
死者の家の間取りには、砂の数ほどの席がある。
あの、なつかしい歌声も、
歪なざわめきも、
みんな、わたしの空だ。
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