1977/美砂
る
わたしはいつも首をかたむけながらそのレコードをかたづける
いくつもあるドーナツたちのまんなかのあたりに
宝物をかくすみたいに
ピアノの部屋は暗い
すぐそばに おかあさんの ワインレッドのガウンがぶらさがっている
わたしは それにふれて、鼻をなすりつける
遠くで妹をしかりつける おかあさんの声
わたしは弟を抱っこするおかあさんをみるとへんなきもちがする
弟はかわいいけれど
でも へんな きもちがする
妹みたいに
泣かないけれど
わたしは 息がくるしくなるまで ガウンに鼻を
なすりつける
幽霊のことは だれにも 話さない
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