夜風、夜の風/たりぽん(大理 奔)
 
夜風をくれるひと
真昼の温もりがさめた後の
森の湿り気の冷たさ
ビル風が懐かしいとき
吐息のように
寄り添って

いつも真夜中を知るのは
まぶたを閉じる仕草
あちこちに仕掛けられた
罠のような時計達じゃない
ガムを噛むリズムまで監視している
安っぽい罠、じゃない

  あの高原で
  アンタレスやペテルギウス
  (赤いのは鉄塔の警告灯)
  吹き抜けて、香りで
  どこにいても君を知らせる
  髪の匂いの
  在処をついに知らず

はなした指先の
行方を名付けることもなく
真夜中、夜に吹く風
つぶやいたけれども
君はかきけして
ただの吐息
手のひらで握りしめて



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