帰省/柴田柴助
手にはハンドル
FMラジオをBGMに
生きる波に流れつつも
生きる波に逆らう両手
ハナミズキ咲く道を片目で寄り道しながら
そろそろ俺のスクランブル交差点に差し掛かる
まあいいじゃないか
FMは正確だ
交差点だろうが
渋滞だろうが
自我がごっちゃごっちゃになっても
一滴の油でうまくスルスル回ることがあると
ハナミズキがポジティブにウインクする
たどり着いた交差点は
りんごと
にんじんと
オレンジと
そして
錆びたネジ
もひとつ、詩
りんごとにんじんとオレンジ
錆びたネジ
詩、詩、詩…
りんごとにんじんとオレンジと
錆びたネジ
詩、詩、詩…
サイン通りのアブラカタブラを唱え
ジューサーの真ん中に一滴ぽつりと
俺のスクランブルをジューサーに
俺がジューサーになる
俺が俺のジューサーになる
県道二二五号線
人生の峠下越え途中の
俺のジューサーの物語
お世話になったFMに軽く会釈する
ありがとうと
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