夢釣り/銀猫
車窓の視界が
きらめく波でいっぱいになり
埠頭を渡る風の翼が
一瞬、かたちとなって見えた午後
岸壁の釣り人は
ただ垂れた糸の先と
深さの知れぬ水底近くを
くろい海水に遮られながら見つめている
風景の端から
海水の温度や色合いを
推し量るわたしのこころと
釣り人は静かに重なり
微かな希望を
深い水のなかで
やみくもに探っている
岸壁に波が際立ち
海風が冷え始めた
けれどまだ立ち去れない
(針の先にこころの欠片を付けてある)
(これを置いてゆく訳にはいかないのだ)
ゆっくり、ゆっくりと
引き上げなくては帰れない
獲物の夢が糸を引かなくても
風がなくから
海がなくから
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