乱反射するあの頃の/霜天
きっと
気付いているのに
気付かない振りでいたんだろう
そこにあるのに
そこにはないと
雨上がりの夕暮れに
乱反射する光と
湿気を含んだ風が
張り付いて
剥がれない
雨に濡れて張り付いた
Tシャツの頼りなさで
超えていく日常の
ほんの一つ一つを
気付いていないと重ねながら
結局
乱反射するあの頃の
苦みや痛みやは
あちこちにばら撒かれて
剥がれなくなっている
遠回り
また帰ってきたよと
いえるだろうか
乱反射するあの頃の
突き刺さる光の束を
ここで受け止めながら
遠いままのあの頃に
ただいまと呟いた
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