小さな帝国/猫のひたい撫でるたま子
人が死ぬことは、物凄い影響力がある。自分で気が付かなくても、心にひっそりと侵入するものがある。湖の波紋のように、中心から余すことなく湖の縁へと行き渡る。
人が死ぬのは悲しいことだ。だから、泣くというのが一般的であると思う。悲しい感情を消化するには涙が一番適しているかもしれない。
しかし、悲しいと素直に思うことをしない不器用な人もいる。そんな人は、泣くことをせず、自分が辛いことも認識せず、解決する手だてを探す。それは泣くことではなく、笑うことだったり、汗をかくことだったりする。
死ぬことは仕方のないこと、だから泣かない。そういう気持ちから泣かないことを選ぶ姿勢は、かっこいいと
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