言葉たりない話 上から下/長谷伸太
 
光ふりそそぐ夜水の底
月の声響きわたる
風もなく静かに水を揺らす

一本の小さな水草は
毎夜月の声を聞く
何か伝えたいけれど
水の外 空の上に
伝える術は何もない
ゆらりゆらり水に揺すられる

一度でも手を繋ぐ事が出来たら
よかったのに

さようならさようなら
水草はもう水の塵になる
揺れる水にやわらかく
広がり溶けていく

水に映る月の姿
揺らすのは涙
地上の草木も露をかぶる
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