ある電話/I.Yamaguchi
り添ってで唾液をためて、歯の裏と舌でぴちゃぴちゃと鳴らしていた。リズムを早めて彼女を五分間で達させると、すぐに電話を切った。
声を聞いても勃たなかったし、悪いことをしたともその時は思わなかった。穢れたと思ったのは、かなり後になってからだったが、それも祖父の死を翌日の昼まで知らせなかった祖母や、自分を差し置いて立ち会った従兄に対するあてつけをしたかったのだと気づいたからだった。しかし、それが通夜のときに穢れた、と思わなかった理由ならば、マキに関係なく僕は葬儀の場面場面を祖母や従兄に当てはめて、穢れた、とか、穢れてない、と考えたに違いなかった。
さっきマキに電話をすると、彼女は通夜のときにやりたいと言ったのと同じ声で、好き、と言い、電話を切らないでくれと甘えるのだった。僕は何も言い返せずに名前を二回呼ばれるまで黙りこくり、マキ、と呼び返すと、彼女はマキ、と自分の名前を言った。僕の名前を呼ばそうともう一度彼女の名前を呼んだが、マキは自分の名前を言い返すのだった。
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