大道の宵/板谷みきょう
休日ともなると街中は、それこそ
老若男女が入り乱れ、掻き分ける様にして
歩まなければならない程の雜踏を形成している。
ファッション雑誌に躍らされた
鮮やかな若者も
スーツ姿の没個性化した
サラリーマン達も
いつもの灰色の
たいして変わらない風景の中に
佇んでいた。
縁日ともなれば
普段は得られない何かを求める興奮に
色めき立つ中島公園も
ジョギングや散歩を楽しむ人達が
通り過ぎて行く位のものだ。
雨に色あせたベンチで
約束の時間を
とうに過ぎているのにも拘わらず
待っていた。
時代遅れの山高帽に燕尾服
その男は
見るからにうさん臭い
怪し
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