バケツ/たもつ
そのことに気づかなかったし
赤飯も美味しくないから
食べたくなかった
湿ったテレビの中で
司会者や出演者の髪や服は
何かをしてきたみたいに
やはり湿っている
ただでテレビをくれた人が来て
テレビはどうでしたかと聞くので
湿ってますと言うと
庭先にあったバケツを
持って帰ってしまった
結局ただのものなんてありはしない
けれどバケツは滅多に使わないし
縁側にもうひとつ別のがあるから
それでもよかった
こうして眺めると
あの日、金魚の近くに
自分を埋めたことがわかる
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