実験室65−F/
塔野夏子
塔を隠した樹々たちがくりかえす
やわらかな墜落
螺鈿の微笑を浮かべる遊星たちが
結晶状に形成する空間に
浮かべられた白い柱廊に
並べられたフラスコ
時折それらのいくつかの中で
新しい時が
あるいはかつて存在した時が発生する
あるいは蒼穹が発生する
旧い天秤の両の皿に
温かく昏い水がゆっくりと交互に滴る
実験者の白衣の背後で
記録はすべて扉のかたちではためいている
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