サナギ一年分/ふるる
 
てスーツケース三つ分の荷物をまとめると
お世話になりました、と後も見ずに出て行った

姉のいなくなった部屋に、とりあえずサナギは置かれた
「何のサナギかしらねえ」と
実は虫好きの母はわくわくして言った

サナギがかえったら、狭い部屋で飛びすぎて羽を痛めるかもしれない
「窓を開けておきなさい」
と父

末の弟は反抗期だから、喋りたくても喋らない
けれども夜中にこっそり
砂糖水を入れた小皿を部屋に入れていた

母が仕込んだビデオにばっちり写っていたらしい


そんなことも、今はいい思い出だ


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