渚/ふるる
気がつくと、渚が後ろにあった
最近やけに足が濡れるなと思っていた矢先のことだった
後ろなど滅多に振り返らないから気がつかなかったけれど
ふと振り向くと、後ろに渚があった
ひたひたと波の打ち寄せる、きれいな渚だった
クラスの皆は知っていて黙っていてくれたらしかった
後ろの席の子にごめんね、と言うと
「足が少し濡れるだけだから」と言ってくれた
駅で電車を待っていると
見知らぬ人が傍に来ていて、ほうっとため息をつく
きっと渚を見ていたんだろう
公園のベンチで休んでいると
若いお母さんが
「あの、子供を遊ばせていいですか?」と聞いてくる
幼い子は波をちゃぷちゃぷ
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