買い物/水野 花
そこの店の品物に
僕の心は吸い取られた
値札を探すけれど見当たらない
店の人らしい人に尋ねてみた
『おいくらですか?』
『これはお金じゃ買えません。
あなた自身 売ってください』
僕自身?
売れるわけないじゃないか。
半信半疑の僕に
止めを刺したのは
やはりその品物
『わかりました。』
勝手に口から出た言葉
その人は
右手で品物をもっていた
左手で僕の口を塞いだ
品物が明るく輝いている時
僕は何もない人になっていた
品物以外何も見れず
鏡の自分さえ解らない
きっと今 その人は
左手に僕をもっているのだろう
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