そのまま僕になっていく/たりぽん(大理 奔)
今住んでいる、この世界の
夜、暗がりと水銀灯の中で
仄明るく掘り起こされる
世界に施された化粧を
はぎ取る
それは暴力ではなく
荒々しい息づかいで
穴からそびえる街路樹の根本
小さな湿りを左手でぬぐい取り
交換される体温で知る
自分のぬくもり
存在を証明しない
優しい言葉は信じない
左手を探したりもしない
ひたすら蒸発しながら
左手はポケットの中で
握ったまま、放さない
閉じた輪の内側で
左手でありたい
左手になっていきたいと
小さな湿りを
生み出しながら
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