螺旋階段はもう夏なのさ/虹村 凌
何回叩いても反応が無いドアの前で
一本だけ煙草吸う
全部が灰になる前に出てこなかったら
帰ろうと思う
疲れちまった
そんなに多くの季節を越えた訳でも無いけど
この階段も幾度となく昇り降りして
四階のこの部屋の前で何度もさようならをして
いつも吹き抜けの下を眺めて
煙草を吸っていたけれど
もう疲れちまったよ
放り出したままの4×4ルービックキューブ
一面だけ完成した3×3ルービックキューブ
山積みにされた漫画も読みきって無いのが大半
もう長い事古本屋にも行ってない
何処にも帰りたくない
そんな戯言を真面目な顔をして聞いて
朝まで吉祥天の前でおしゃべり
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