無のむこうに/
木立 悟
うに呼んでいる
しかし誰も呼んではいない
誰もいない道をゆく
ざわめきの道
しずけさの道
高まりながらやがて交互に
ひとつの色を置き去ってゆく
無のむこうに満ちるもの
指からさらに遠のくもの
指と同じかたちでいながら
触れることなく消えてゆくもの
荒れ地の風が煮立ち泡立ち
音は波を覆い退く
退きながら異なりながら
小さな唱を織り重ねる
何も無いはずはない
つぶやくことであらがいつづけ
午後の光のなかに立ち
きれいなものを燃やしてゆく
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