鶺鴒/10010
 
あのころ僕らは草原を這いずり回っていて、いつかこの大空に罠を仕掛けてやろうと企みながら待っていた。必要なら鶺鴒だって呼び止めた。まるでピンを刺すようにして。でもそのときから、大空も僕らを罠にかけようと視線を這いずらせてずっとずっと待っていたんだって、気付いたりはしなかった。悪意はいにしえから在ったのに(だから悪意なのだと今では思う)、陽の光の眩しさや草の葉の揺らめきや水飲み場の気だるさとそれは区別がつかなかった。大空は、必要なら鶺鴒だって呼び止めた。まるでピンを刺すようにして。
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