笑う仏陀/望月 ゆき
 
仏陀は泣いている
空の向こうのどこかの国の
古都に横たわり

仏陀は泣いている
笑った顔で
笑ったような顔のままで

その肩や 腕や
頭や 鼻や 手のひらを
生活の場としているマカークザルの群れ

サルは権力争いを繰り返す
サルは婦女暴行を繰り返す
仏陀の手のひらの上で
仏陀の肩や 腕や 鼻の上で

マカークは そうして生きている
マカークは 生きるためにそうせねばならない

サルは仏陀を知らない
サルは何も知らない
サルは何も知らないのだから
罪は ないのだろう

仏陀は唱える
家族や仲間たちを愛しなさい、と。
寛容の精神を説く。

その教えは
もはや むなしく
仏陀の涙の中に溶け出して
時々降る雨と混ざり合って
黄色い川へと流れてしまった

仏陀は泣いている
空の向こうの古都で

仏陀は泣いている
笑ったような顔で

教えを説きながら

仏陀は いつまでも泣いている

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