魚売り/板谷みきょう
 
にしなを作りながら)
“三匹欲しいんだけれど、一匹おいくらかしら?”
(はっきり解りやすく)
「一匹ですか?一匹、三十円でございますから三匹ですと…丁度、九十円になりますが、九は苦に通じるなんてゲンが悪いや。十円ちょいとまけて、八十円に致しましょうか。ねぇ、お客さん。八なんて、末広がりで縁起が良いや。」
(再び大仰なしなを作りながら)
“あら、まけてくれるの?じゃあ、百円でお釣りが要るわねぇ。”
(立ち上がり上手へ向かいつつ)
「お〜っと、何もこちらにいらっしゃらなくても、そちらへ持って伺いますよ。」って、魚持ってった時、俺、あんな所へ置いたか魚?。
(立ち止まり魚を眺め考え込みな
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