缶/葉leaf
鉛筆の一側面の上半分が
白く光を反射している
右目で見たときと左目で見たときでは
白い光の領域が違う
僕は透明な手を鉛筆へと伸ばすが
途中で疲れて手は霧消する
鉛筆が置かれてあることと
僕が詩を書くことは
たぶん同じことだ
老眼鏡越しに見る
紙の上の太い文字は
ゆがんでいる
僕の心にはむら熱が生まれて
それを仮に「苛立ち」と呼んでみる
ゆがんだ太い文字は
苛立ちを介して
僕の感情のなめらかな部分を
どこまでも遠くへと追っていった
そのことによって
感情の経路は磨き上げられた
障子の格子が
あまりにも秩序だっているので
格子が欠けた部分がとても美し
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